日本人は本当に『資格が好き』なのか?リスキリング参加率、世界最下位クラスの実態をデータで見る

「日本人って資格好きだよね」ってよく言われる。書店には資格本がずらっと並んでるし、簿記やTOEICの申込者数もかなりの数。だからボクも正直、なんとなく「日本人=資格好き」だと思ってた。でも、OECDの学習参加率のデータを見たら、印象がだいぶ変わったよ。今日はその話をズバッとしていく。

さるちゃんのズバッと結論
資格の”種類の多さ”や”受験者数”だけ見れば日本は確かに賑やかだけど、「社会人が学び続けているか」という参加率で見ると、日本はOECDの中でもかなり低い水準にある。デンマークやオランダが5割超えなのに対して、日本は3割程度。ここは正直、印象と実態がズレてるところだと思う。

『資格好きな国』というイメージの実態

まず整理させてほしい。「日本人は資格好き」というイメージ、どこから来てるんだろう。おそらく、国家資格・民間資格を合わせた資格の”種類”の多さや、簿記・TOEIC・宅建といった人気資格の受験者数の多さが根拠になってると思う。実際、資格スクールや通信講座の市場規模も大きいし、書店の資格コーナーの充実っぷりを見れば「資格文化がある国」だと感じるのは自然なことだ。

資格の種類の多さと参加率は別問題(事実の整理)

でもここ、ちゃんと分けて考えないといけない。「資格の種類が多い」「特定の資格の受験者数が多い」という話と、「社会人が継続的に学習・訓練に参加しているかどうか」という話は、まったく別の指標なんだ。前者は”資格ビジネスの規模”の話に近くて、後者はOECDが国際比較している「成人学習参加率(Adult Learning Participation Rate)」、つまり25〜64歳の大人のうち、直近1年間にformal(正規の教育機関)またはnon-formal(セミナー・研修・通信講座など)の学習・訓練に参加した人の割合の話。この記事では、後者の「参加率」そのものに焦点を当てる。

さるちゃんの本音
正直に言うと、ボクも最初「資格が多い=学習意欲が高い国」だと勘違いしてた。でも簿記2級を持ってる人の数と、「今年もなんか勉強した」という人の割合は、別の話なんだよね。ここを混同すると、この後の国際比較データが「え、そんなはずないでしょ」って感覚的に受け入れづらくなる。だからまずこの前提を揃えておきたかった。

世界の学習参加率データで見る日本の位置

ここから本題。OECDが公表している成人学習参加率のデータを、実際に確認できた範囲で並べてみる。

デンマーク・オランダ5割台 vs 日本3割程度

OECDの報告書「Trends in Adult Learning」(2024〜2025年公表、2023年実施のSurvey of Adult Skills=PIAAC第2サイクルに基づく)によると、OECD加盟国全体の平均では、成人のおよそ4割(約40%)が年間で何らかのformal/non-formalな学習・訓練に参加している。国別に見ると、フィンランドとノルウェーが58%でもっとも高く、次いでアメリカが55%、デンマークが54%、ニュージーランドが53%。もっとも低いのは韓国の13%だった。

一方、日本については、労働政策研究・研修機構(JILPT)がOECDの報告書(「Getting Skills Right: Creating Responsive Adult Learning Opportunities in Japan」)を紹介した特別報告や、日本経済新聞がOECDデータとして報じた記事の中で、「デンマークやニュージーランドが55%程度であるのに対し、日本は35%にとどまる」という数値が示されている。日経の記事では「日本はOECD平均より5ポイントほど低い」とも書かれていて、この”OECD平均40%前後、日本35%前後”という関係は、複数の資料の間でおおむね一致している。

もう一つ、別の切り口のデータもある。OECD「Education at a Glance」が公表している、12か月を振り返り期間とした成人教育・訓練参加率(formal and/or non-formal education)では、「デンマーク・フィンランド・オランダ・ニュージーランド・ノルウェー・スウェーデンは60%超、一方でギリシャ・イタリア・トルコなどは30%未満」という国のグルーピングが示されている。ここでもオランダは”高参加率グループ”の一角だ。

ここで正直に言っておきたいのだけど、「Trends in Adult Learning」と「Education at a Glance」は、調査の振り返り期間や集計方法が微妙に異なるため、同じ国でも出てくる数値がぴったり一致するわけではない(たとえばデンマークは調査によって54%や60%超など幅がある)。だから「日本は◯◯%」と一桁まで断定するのは危険で、この記事では「調査によって数値の幅はあるが、日本が国際的に低水準に位置するという傾向は複数の資料で一致している」という事実を軸にしたい。

60% 40% 20% 58% フィンランド/ノルウェー

55% アメリカ

54% デンマーク

53% ニュージーランド

約40% OECD平均

35% 日本

13% 韓国 出典:OECD “Trends in Adult Learning”(2024〜2025、PIAAC2023基準)/JILPT特別報告(OECD引用)

さるちゃんの本音
金融ITの現場で働いてる感覚から言うと、この数字は妙に納得できるんだよね。周りのエンジニアを見渡しても、資格試験の直前に猛勉強する人はいても、「毎年何かしら学び続けている」人は正直そんなに多くない。それが悪いって話じゃなくて、「継続して学ぶ仕組み」自体が日本の職場に少ないんだと思う。個人の意欲の問題というより、環境の話として受け止めたい。

表:主要国比較

国・地域 成人学習参加率(目安) 出典・備考
フィンランド・ノルウェー 58% OECD Trends in Adult Learning(2024〜2025)
アメリカ 55% 同上
デンマーク 54%(調査により55〜60%超の幅あり) OECD Trends in Adult Learning/Education at a Glance
オランダ 60%超(12か月参照ベース) OECD Education at a Glance
ニュージーランド 53〜55% OECD Trends in Adult Learning/JILPT特別報告
OECD平均 約40% OECD Trends in Adult Learning
日本 35%程度 JILPT特別報告(OECD引用)/日本経済新聞
韓国 13% OECD Trends in Adult Learning

参加率 60%超のグループ デンマーク フィンランド オランダ ニュージーランド ノルウェー スウェーデン

参加率 30%未満のグループ ギリシャ イタリア トルコ ロシア (日本は35%前後で 両グループの中間水準)

日本人の基礎スキルは高い、それでも参加率が低い理由(ここからは解釈)

ここで一つ、面白い事実がある。OECDが2023年に実施したSurvey of Adult Skills(PIAAC第2サイクル)の日本版カントリーノートによれば、日本の成人の読解力・数的思考力の習熟度は参加国中トップクラス(1位)だった。つまり、日本の社会人は「もともとの基礎スキル」は世界トップレベルにある。にもかかわらず、継続的な学習参加率は低い。この”高スキル・低参加率”というギャップこそが、この記事でいちばん伝えたいポイントだ。

日本の”スキルは高いのに、学び続ける人は少ない”ギャップ 読解力・数的思考力 (参加国中1位) 基礎スキル:高い

成人学習参加率 (35%程度、OECD平均以下) 参加率:低い

ギャップ

制度・企業文化などの構造要因(ここからは解釈)

ここから先は、データそのものではなくボクの解釈が入る。鵜呑みにせず、「そういう見方もあるか」くらいの温度感で読んでほしい。日本の学習参加率が低い理由は、単一の原因ではなく、いくつかの構造要因が重なっていると考えられている。

  • フォーマル教育への参加が少ない:JILPTの資料によれば、日本の成人のフォーマル教育(大学・大学院などへの再入学など)への参加率は3%未満とされ、OECD平均の8%を大きく下回る。社会人が大学院などに戻って学び直す文化そのものが薄い。
  • 企業内OJT中心の人材育成:日本は伝統的に、企業が新卒を採用してから社内で育てる「OJT中心・年功序列型」の人材育成が主流だった。個人が自発的に外部の学習機会へ参加する動機や時間の確保が、制度として後回しにされやすい。
  • 費用・時間の自己負担感:学び直しにかかる費用や時間を「会社が用意してくれるもの」ではなく「個人が捻出するもの」と感じている人が多いことも、参加のハードルになっていると考えられる。
  • 自動化リスクと参加率の差:JILPTの資料では、自動化リスクが低い仕事に就く労働者の54%が訓練に参加している一方、自動化リスクが高い仕事の労働者では24%にとどまるという傾向も紹介されている。本来学び直しが必要な層ほど参加しにくいという構造は、日本に限った話ではないが、見過ごせない点だ。

大事なのは、これは「今の社会人が怠けている」という話では決してないということ。むしろ基礎スキルは世界トップクラスなのに、学び続ける”仕組み”や”余白”が制度・企業文化の側に十分用意されていない、というのがボクの見立てだ。矛先は個人ではなく、構造に向けたい。

個人としてできることは何か

低参加率だからこその希少価値

ここまで暗い数字ばかり並べたけど、ここからは前向きな話をしたい。日本の学習参加率が35%程度ということは、裏を返せば「継続して学び続けている人は、まだ全体の3分の1程度しかいない」ということでもある。つまり、ここに入るだけで相対的には少数派になれる、ということだ。

ボク自身、金融ITの現場でエンジニアとして働きながら、基本情報技術者・日商簿記2級・証券外務員一種を取ってきた。正直、どれも派手な資格じゃない。でも「業務の合間に、ちょっとずつでも学び続けている」というだけで、社内でも意外と目立つし、話しかけられることが増えた実感がある。参加率が35%しかない国だからこそ、少し学び続けるだけで差がつきやすい、というのは大げさな話じゃないと思う。

資格の選び方そのものについては、以前に詳しくまとめた記事があるので、興味があればそちらも見てほしい。→ 社会人におすすめの資格の選び方

この記事はデータ検証がテーマだから、特定の資格やサービスを勧める話はしない。ただ一つ言えるのは、「日本全体の参加率が低い」という事実は、個人にとっては悲観する材料というより、むしろ小さく始めるだけで意味のあるポジションが取れる、という話に読み替えられるということだ。

よくある質問

Q. 日本人は資格を取る人が多いのでは?

A. 資格の種類数や特定資格の受験者数の多さと、継続的な学習参加率(OECDが国際比較している指標)は別の話。本記事では後者、つまり「社会人が年間を通じて学習・訓練に参加しているかどうか」の国際比較に焦点を当てている。

Q. 参加率が低い原因は一つですか?

A. いいえ。フォーマル教育への参加の少なさ、企業内OJT中心の人材育成、費用・時間の自己負担感など、複数の構造要因が指摘されており、単一の原因に断定できるものではない。

Q. 「学習参加率」と「資格保有率」はどう違うのですか?

A. 資格保有率はある時点で特定の資格を持っている人の割合を指すことが多いのに対し、学習参加率はOECDの定義では直近1年間にformal/non-formalな教育・訓練に参加したかどうかを尋ねる指標。継続性を測っている点が異なる。

Q. この記事のデータをもとに、将来の日本の参加率がどうなるか予測できますか?

A. できない。本記事はあくまで現時点で確認できた過去〜直近のOECDデータの整理であり、将来の参加率の変化を断定的に予測するものではない。

出典・参考データ

この記事を書いたサル: さるちゃん
金融ITの現場で働くエンジニア。基本情報技術者・簿記2級・証券外務員一種ほか、働きながら資格を取ってきた実体験と、世界のデータをもとに「ズバッと分かる」解説をお届け。→ さるちゃんって何者?(プロフィール)

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