資格取得は世界的に見ても『年収を上げる手段』として有効なのか?OECD・スキル調査データで徹底検証

さるちゃんのズバッと結論
OECDの調査データを見る限り、「学び続けている人ほど所得や雇用が安定しやすい」という傾向は世界的にたしかにある。でも日本の場合、その手前の「そもそも学び直しに参加する人が少ない」という土俵の低さが一番の課題。資格が年収を保証してくれるわけじゃないけど、「動く人が少ない世界で動く」こと自体には意味があるとボクは思ってる。

「資格を取ったら年収が上がるのか」って話、日本国内のアンケートとか体験談ベースの記事はよく見るけど、世界的に見たらどうなのか気になったので、OECDの公式データを掘ってみた。結論から言うと、個々の資格が年収を保証するという証拠はどこにもない。でも「学び続ける人・スキルを保つ人」と所得・雇用の安定には相関があるとOECDは報告している。そしてその「学び続ける人」の割合、日本は世界の中でもかなり低い部類に入る。今日はこのあたりを、事実と解釈をちゃんと分けながらデータで見ていく。

資格取得と年収の関係、世界のデータは何を示しているか

OECD Survey of Adult Skillsの位置づけ(事実)

まず土台になるデータの紹介から。OECDは2022年9月から2023年にかけて「Survey of Adult Skills(国際成人力調査、通称PIAAC)」を実施していて、31か国・地域から16歳〜65歳の成人およそ16万人が参加した。日本からも5,165人が参加している。この調査は「読解力」「数的思考力」「状況の変化に応じた問題解決能力」という3つの基礎スキルを、統一の基準でテストするという、かなり大がかりな国際比較調査だ。

日本の結果は、読解力289点(参加国中2位、OECD平均260点)、数的思考力291点(2位、OECD平均263点)、問題解決能力276点(1位に相当、OECD平均251点)。いずれもトップのフィンランド(読解力296点・数的思考力294点)にかなり近く、問題解決能力に至ってはフィンランドと同点で並んでいる。これは「事実」として、日本の成人の基礎スキルは世界トップクラスだということを示している。

図1:PIAAC2023 基礎スキルスコア比較(日本 vs OECD平均 vs フィンランド) 読解力 数的思考力 問題解決能力 日本289 OECD平均260 フィンランド296

日本291 OECD平均263 フィンランド294

日本276 OECD平均251 フィンランド276 出典:OECD「Survey of Adult Skills 2023 – Country Note: Japan」 スコアは0〜500点満点。バーの長さはスコアに比例。

学習参加と所得の相関(事実と解釈を分けて記述)

ここが本題。OECDの分析(Education at a Glance 2025内「PIAAC:成人の情報処理スキル」)によると、参加国平均で数的思考力が1標準偏差上がると時給が9%、読解力が1標準偏差上がると時給が8%、それぞれ高くなる傾向が報告されている。また上級中等教育・中等後非高等教育を修了した層で見ると、数的思考力レベル4以上の人はレベル2の人より31%、大卒層に限ると40%賃金が高いというデータもある。ここまでは「事実」だ。

ただし、ここからは解釈になる。これは「スキルが高い人ほど賃金が高い傾向がある」という相関の話であって、「資格を取ればこの通りに賃金が上がる」という因果を証明するものではない。スキルの高い人がもともと高賃金の職に就きやすい、という逆方向の説明も十分成り立つ。この区別を曖昧にしたまま「資格で年収アップ」と言い切る記事は、正直ボクはあまり信用していない。

さるちゃんの本音
「1標準偏差でウン%アップ」みたいな数字、パッと見インパクトあるけど、これを「簿記2級を取れば年収が9%上がる」みたいに変換するのは完全に誤読。相関は相関。証券外務員一種を取ったからボクの給料が上がったかというと、正直そこだけ切り出すのは無理がある。ただ「学び続けている人が評価されやすい土俵にいる」ことは事実として押さえておいていいと思う。

日本のリスキリング参加率は世界と比べてどうか

デンマーク・オランダ5割 vs 日本3割程度の実態(事実)

職場外での学習・訓練への投資割合が高い国として知られるデンマークやオランダは、成人の学習参加率が5割を超えるのに対し、日本は3割程度にとどまっていると報告されている(公益財団法人東北活性化研究センターの調査報告書が、この差を指摘している)。この「参加率」は必ずしも同一の調査・同一の定義で測られたものばかりではないので、数字の解釈には幅があることは前提として書いておく。それでも「デンマーク・オランダが日本よりかなり高い水準にある」という方向性自体は、複数の資料で一致している。

加えてOECDの公式データでも似た構図が確認できる。「Education at a Glance 2025」の日本カントリーノートによれば、読解力レベル4以上の高スキル層でも、過去1年間にフォーマル・ノンフォーマルな教育・訓練に参加した人の割合は52%で、OECD平均の70%を18ポイント下回る。読解力レベル1以下の層では日本17%に対しOECD平均26%と、こちらも差が開いている。つまり「スキルが高い人でも、日本では学び直しに参加する割合が国際的に見て低い」というのが、OECDの一次データからも読み取れる事実だ。

表:主要国の学習参加率比較

国・区分 学習・訓練参加率の目安 出典
デンマーク(全体) 5割超 東北活性化研究センター調査報告書(2023年度)
オランダ(全体) 5割超 同上
日本(全体) 3割程度 同上
日本(読解力レベル4以上の高スキル層) 52%(OECD平均70%) OECD「Education at a Glance 2025」日本カントリーノート
日本(読解力レベル1以下の層) 17%(OECD平均26%) 同上
図2:成人の学習参加率 国際比較(目安) デンマーク オランダ 日本(全体) 日本(高スキル層) 5割超 5割超 約3割 52%(OECD平均70%) 出典:東北活性化研究センター調査報告書/OECD Education at a Glance 2025 日本カントリーノート

日本人の基礎スキルは高いのに、なぜ学び直しが進まないのか

OECD基礎スキル調査で日本は上位(事実)

ここまでの内容を整理すると、日本人の基礎スキル(読解力・数的思考力・問題解決能力)は31か国・地域中で上位、特に低い習熟度(レベル1以下)の割合が参加国中もっとも少ないという結果になっている。これはOECDの調査結果として明確な事実だ。

参加率とのギャップという「事実」

その一方で、学び直し・訓練への参加率は国際的に見て低い水準にある。「スキルは高いのに、参加率は低い」というのは一見矛盾しているように見えるが、これも調査データが示す事実として受け止めていいと思う。

図3:日本の「スキル順位」と「学習参加率」のギャップ 基礎スキル順位 学習参加率 31か国中 上位(読解力・数的思考力ともに2位) 3割程度(低水準) スキルは高いのに、参加率は低いというギャップ

さるちゃんの本音
これ、ボクは会社にいて肌感でもわかる。周りのエンジニアも別に地頭やスキルが低いわけじゃない。むしろ器用な人が多い。でも「じゃあ資格取ろう」「勉強し直そう」って腰を上げる人は少数派。原因を一つに決めつける気はないけど、制度や会社の評価の仕組み、時間の作りづらさとか、複合的な要因があるんだろうなとは思ってる。

この結果から資格取得にどんな意味があるといえるか(ここからは解釈)

個人が動くこと自体の希少価値

ここから先は、データそのものではなくボクの解釈になる。日本全体の学習参加率が3割程度ということは、逆に言えば「学び続けている7割弱の人たちの中には入っていない」人がマジョリティということだ。だとすると、そのマジョリティ側から一歩踏み出して資格を取りに行くという行動自体が、母集団の中では相対的に希少なポジションになる、とボクは考えている。資格取得の年収データを検証した記事でも触れたけど、資格そのものより「学び続ける習慣を持っているかどうか」のほうが、長い目で見たときの差になっている印象がある。

資格を取る行為とスキル維持の関係

もう一つの解釈は、資格取得のプロセスがスキルの「維持・可視化」につながるという点だ。OECDのデータが示す通り、日本人の基礎スキルは国際的に高い水準にある。ただし基礎スキルは使わなければ錆びていく、というのは調査というより一般的な理解の範囲の話だ。資格試験に向けた学習は、その錆びつきを防ぐための強制的なメンテナンス機会として機能している側面がある、というのがボクの見立てだ。年収が保証されるという話とは切り離して、「スキルを可視化し、維持する行為」として資格を捉え直すと、少し見え方が変わってくると思う。

日本国内のIT・金融資格ホルダーの実例

基本情報・簿記2級・証券外務員一種保有の実体験

ここはデータではなく、ボク個人の実体験として書く。ボクは金融IT企業で働く現役エンジニアで、基本情報技術者・日商簿記2級・証券外務員一種の3つを働きながら取ってきた。基本情報はエンジニアとしての基礎固め、簿記2級は金融系のプロジェクトで数字の話についていくため、証券外務員一種は業務上必要になったから、というのがそれぞれの動機で、正直「年収を上げるために取った」という資格は一つもない。

それでも振り返って思うのは、この記事で紹介したOECDのデータと自分の実感が重なる部分があるということだ。周りを見渡しても、資格を取ったりオンライン講座で学び直したりしている同僚は、体感としては少数派。オンスクや資格の大原のような通信講座を使っている人もいるにはいるけど、多くはない。日本全体の参加率が3割程度という数字は、ボクの職場の肌感ともそんなにズレていない。もし資格の勉強を通じて自分のスキルを棚卸ししたいなら、IT・金融・会計系の社会人向け資格3選もあわせて読んでみてほしい。

まとめ

今回調べた範囲でわかったことを整理すると、次の3点になる。1つ目、OECDのデータでは基礎スキル(読解力・数的思考力)が高い人ほど賃金が高い傾向があるという相関が国際的に報告されている。2つ目、日本人の基礎スキル自体は31か国・地域中でも上位に位置している。3つ目、それにもかかわらず日本の学習・訓練への参加率はデンマークやオランダなど参加率5割超の国々と比べて低く、OECDの一次データでも高スキル層の参加率(52%)がOECD平均(70%)を下回っている。世界的に見ても学習参加が所得や雇用の安定に結びつく傾向はあるが、日本は参加率自体が低く「取るかどうか」以前の土俵に課題がある、というのがこの記事の結論だ。資格が年収を保証するという単純な話ではなく、「学び続ける人が少ない環境で、あえて学び続ける」ことの意味を、データを踏まえた上で考えてみてほしい。

よくある質問

資格を取れば必ず年収が上がりますか?

断定はできない。OECDの国際データが示しているのは、基礎スキル(読解力・数的思考力など)の高さと所得・雇用の安定との間に相関があるという傾向であり、個々の資格を取得したことが年収を保証するものではない。

日本のリスキリング参加率が低いのはなぜですか?

制度的な要因や企業文化、学習時間の確保のしづらさなど複数の要因が指摘されているが、単一の原因に断定できるものではない。本記事では、参加率が低いという「事実」と、その背景に関する「解釈」を分けて紹介した。

日本人の基礎スキルが高いというのは本当ですか?

OECDのSurvey of Adult Skills 2023によると、日本は読解力289点・数的思考力291点でいずれも参加31か国・地域中2位、問題解決能力は276点でトップのフィンランドと同点だった。低い習熟度層の割合がもっとも少ない国の一つでもある。

資格取得の勉強はスキル維持に役立ちますか?

資格試験に向けた学習が基礎スキルの維持・可視化に役立つ可能性はあるという解釈は成り立つが、これはOECDデータそのものが直接証明している内容ではなく、本記事における解釈の一つである点には注意してほしい。

出典・参考データ

この記事を書いたサル: さるちゃん
金融ITの現場で働くエンジニア。基本情報技術者・簿記2級・証券外務員一種ほか、働きながら資格を取ってきた実体験と、世界のデータをもとに「ズバッと分かる」解説をお届け。→ さるちゃんって何者?(プロフィール)
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