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この2つ、IPAのスキルレベルはどちらも同じ「レベル2」だ。でも合格率はまるで違う。IPAの統計資料(令和8年7月分)で令和7年度の実績を見ると、情報セキュリティマネジメントが70.0%、基本情報が38.3%。31.7ポイントの差がある。理由はシンプルで、片方には科目B(アルゴリズムとプログラミング)があり、もう片方には無いからだ。つまり選ぶ基準は「難易度」じゃなく「コードを読む側に回りたいかどうか」。ここが決まれば答えは自動的に出る。
結論から言うと、情報システムを開発・運用する技術者を目指すなら基本情報技術者試験、業務でITを利活用する立場としてセキュリティの知識を実務に活かしたいなら情報セキュリティマネジメント試験が、IPA(情報処理推進機構)公式の対象者像に沿った現実的な選び方です。名前が似ている2つの試験ですが、想定している受験者像がそもそも違います。
「情報セキュリティマネジメントと基本情報、名前が似ていてどちらを受ければいいか分からない」という声はよく聞かれます。この記事では、IPA公式の情報を一次情報として確認しながら、対象者像・出題内容・難易度の違いを整理し、自分がどちらを選ぶべきかを判断できるように解説します。
なお、筆者は基本情報技術者試験については独学で取得した実体験がありますが、情報セキュリティマネジメント試験そのものの受験経験はありません。この記事では、基本情報については実体験を踏まえつつ、情報セキュリティマネジメントについてはIPA公式情報を中心とした客観的な解説にとどめます。
情報セキュリティマネジメントと基本情報の違い(IPA公式の対象者像から)
スキルレベルの違い
IPAが定める情報処理技術者試験は4段階のスキルレベルに分かれており、情報セキュリティマネジメント試験(SG)と基本情報技術者試験(FE)は、いずれも「スキルレベル2」に位置づけられています。公式のレベル区分だけを見ると同じ階層にありますが、想定する対象者像と出題内容はまったく異なります。
対象者像の違い(エンドユーザーか技術者か)
IPA公式サイトによると、情報セキュリティマネジメント試験の対象者像は「情報システムの利用部門にあって、情報セキュリティリーダーとして、部門の業務遂行に必要な情報セキュリティ対策や組織が定めた情報セキュリティ諸規程の目的・内容を適切に理解し、情報及び情報システムを安全に活用するために、情報セキュリティが確保された状況を実現し、維持・改善する者」とされています。つまり、IT部門に限らず、業務でITを利用するすべての立場の人を想定した試験です。一方、基本情報技術者試験は、情報システムの開発・構築に携わる技術者としての基礎力を問う試験であり、対象者像がより技術寄りに設定されています。
試験内容・出題範囲の違い
マネジメント・脅威分析中心か、アルゴリズム・開発技術中心か
情報セキュリティマネジメント試験は、CBT方式で通年実施され、試験時間120分・60問という構成です。出題内容は、情報セキュリティのマネジメント(脅威・脆弱性への対処、組織的な対策、情報セキュリティ諸規程の理解など)が中心で、ITの基礎知識も問われますが、プログラミングやアルゴリズムの出題はありません。
一方、基本情報技術者試験は科目A・科目Bの2科目構成で、科目Bではアルゴリズムやプログラミングの考え方を問う問題が出題されます。テクノロジ系の技術知識に加えて、マネジメント系・ストラテジ系の知識も幅広く問われる、技術者育成を目的とした試験内容になっています。
難易度・合格率の違い
一般的に基本情報の方が難しいとされる理由
公式のスキルレベルはどちらも「レベル2」ですが、実際の合格率には大きな差があります。ここは目安や伝聞ではなく、IPAが公表している統計資料(令和8年7月分・令和8年8月21日現在)の推移表の数値でそのまま確認します。
令和7年度の実績を並べると、こうなります。
- 情報セキュリティマネジメント試験(SG):応募50,226人 / 受験45,924人(受験率91.4%) / 合格32,141人 / 合格率70.0%
- 基本情報技術者試験(FE):応募172,217人 / 受験147,186人(受験率85.5%) / 合格56,370人 / 合格率38.3%
差は31.7ポイントです。さらに時系列で見ると、情報セキュリティマネジメントが72.6%→69.0%→70.0%と約70%前後で安定しているのに対し、基本情報は47.1%→40.8%→38.3%と3年で8.8ポイント低下しています。令和8年度も4〜7月の集計で情報セキュリティマネジメント72.7%、基本情報38.5%と、同じ傾向が続いています。
ここは事実と解釈を分けて書きます。事実は上の数値です。解釈としては、両試験の最大の構造的な違いが「科目B(アルゴリズムとプログラミング)の有無」である点から、この差の主因はプログラミング分野の有無にあると考えるのが自然です。ただしIPAは合格率の差の理由を公表していないため、断定はできません。受験者層の違いも影響している可能性があります。
| 比較項目 | 情報セキュリティマネジメント試験(SG) | 基本情報技術者試験(FE) |
|---|---|---|
| スキルレベル(IPA区分) | レベル2 | レベル2 |
| 対象者像 | ITを利活用する部門の情報セキュリティリーダー | 情報システムを開発・構築する技術者 |
| 試験方式 | CBT方式(通年実施) | CBT方式 |
| 出題内容の中心 | 情報セキュリティのマネジメント・脅威対策 | テクノロジ系全般+アルゴリズム・プログラミング(科目B) |
| 合格率(令和7年度・IPA統計) | 70.0%(受験45,924人/合格32,141人) | 38.3%(受験147,186人/合格56,370人) |
| 受験率(令和7年度) | 91.4% | 85.5% |
ここでよくある勘違いを潰しておく。「合格率が高い=価値が低い」ではない。令和7年度のSGの受験率は91.4%で、FEの85.5%より高い。申し込んだ人がちゃんと受けに来ているんだ。会社の推奨で受ける人が多いことの裏返しでもあるけど、受ける層が違えば合格率が違うのは当たり前で、そこから試験の格を語るのは筋が悪い。比べるべきは合格率じゃなく、出題範囲に科目Bがあるかどうか。そこだけが本当の分岐点だよ。
職種別に見るどちらを選ぶべきか
エンジニア職を目指すなら
システム開発やインフラ構築などエンジニア職を目指す、あるいは現在エンジニアとして働いている場合は、基本情報技術者試験の方がIPA公式の対象者像に合致します。プログラミングやアルゴリズムの基礎を体系的に学べる点は、実務にも直結しやすい部分です。基礎知識のインプットをスキマ時間で進めたい場合は、スキマ時間を有効活用できる【オンスク.JP】
のような講座を併用する人もいますが、アルゴリズム・プログラミングの実践力は問題演習でしか身につかない点は変わりません。
非エンジニア(企画・営業・管理部門)なら
営業・企画・管理部門など、ITを「使う」立場で働く非エンジニアの社会人にとっては、情報セキュリティマネジメント試験の対象者像がより近いといえます。プログラミングの知識までは必要とせず、業務でITやセキュリティに関わる場面での判断力を身につけたい場合には、こちらが現実的な選択肢になります。ただし、キャリアの方向性によっては非エンジニアであっても基本情報の学習が役立つ場面はあるため、「非エンジニアだから絶対にSGを選ぶべき」と断定できるものではありません。
迷ったときの考え方
職種だけでは判断がつかない場合は、「日々の業務でコードを書く・システムを構築する側に回りたいか」「ITを使う立場のまま、セキュリティやマネジメントの知識を強化したいか」で考えると整理しやすくなります。将来的にエンジニア職への異動や転職を視野に入れているなら、多少ハードルが高くても基本情報から始めておく方が、後々の学習の土台になりやすいという考え方もあります。逆に、当面は今の職種を続けながら知識を補強したいという場合は、情報セキュリティマネジメントから始めて、必要に応じて基本情報にステップアップするという順序も現実的な選択肢です。ITと金融・会計を組み合わせたキャリア戦略に関心がある場合は、社会人におすすめの資格3選もあわせて参考にしてください。
基本情報にステップアップする道もある
基本情報の独学記事へ誘導
情報セキュリティマネジメント試験を取得した後、より技術的な理解を深めたくなった場合は、基本情報技術者試験にステップアップする道もあります。ただし出題範囲(特にアルゴリズム・プログラミング分野)が大きく異なるため、SGの知識だけでFEに合格できるわけではなく、独立した学習が必要になる点には注意してください。基本情報技術者試験を独学で目指す際の学習方法や勉強時間の目安については、基本情報技術者試験は独学で受かるかを整理した別記事で詳しく解説しています。
どちらの試験も、テキストの読み込みだけでなく問題演習の反復が合格の近道です。特に基本情報の科目Bは、読むだけでは点になりません。基本情報の科目Bで落ちる人の共通点|IPA評価点分布が示す52%の壁では、IPAが毎月公表している評価点分布から「どこで人が詰まっているか」を人数で示しています。科目Bを避けるか受けて立つかを決める材料になるはずです。
よくある質問
Q. 合格率はそれぞれ何%ですか?
IPAの統計資料(令和8年7月分・令和8年8月21日現在)によると、令和7年度の実績は情報セキュリティマネジメント試験が受験45,924人・合格32,141人で合格率70.0%、基本情報技術者試験が受験147,186人・合格56,370人で合格率38.3%です。差は31.7ポイントあります。令和8年度の4〜7月集計でも、それぞれ72.7%と38.5%で同じ傾向が続いています。
Q. 両方受ける必要はありますか?
必須ではありません。IPAのスキルレベル区分ではどちらもレベル2で、上位下位の関係にはないためです。ただし出題範囲が重なる部分(情報セキュリティの基礎)があるため、片方の学習がもう片方の一部に活きることはあります。両方に時間を使うより、まず自分の対象者像に近いほうを1つ取り切るほうが現実的です。
Q. 情報セキュリティマネジメントは簡単すぎますか?
公式のスキルレベルは基本情報と同じレベル2ですが、対象領域が異なるため単純な難易度比較はできません。合格率だけを見ると情報セキュリティマネジメントの方が高い傾向にありますが、「簡単だから価値が低い」と一概には言えず、対象とする知識の性質が違う試験だと捉えるのが適切です。
Q. 情報セキュリティマネジメントを取ってから基本情報を目指せますか?
可能ですが、出題範囲(特にアルゴリズム・プログラミング)が異なるため、情報セキュリティマネジメントの知識だけでは対応できない部分があり、独立した学習が必要になります。
Q. 非エンジニアでも基本情報は取る意味がありますか?
職種やキャリアの方向性によって異なるため一概には言えません。ITの構造をより深く理解したい、将来的に技術寄りの業務に関わりたいといった目的がある場合は、非エンジニアであっても学習する意味を見出せる可能性があります。
Q. 情報セキュリティマネジメントは転職で評価されますか?
評価のされ方は業界や企業によって異なり、断定的な効果を述べることはできません。ITを利活用する立場としての基礎知識を持っていることの証明にはなり得ますが、資格の有無だけで転職結果が決まるものではない点に留意してください。
まとめ
情報セキュリティマネジメント試験と基本情報技術者試験は、IPA公式のスキルレベル区分こそ同じレベル2ですが、対象者像は「ITを利活用する立場」か「開発・構築に携わる技術者」かではっきり分かれています。エンジニア職を目指す・従事しているなら基本情報、非エンジニアとしてITやセキュリティの知識を実務に活かしたいなら情報セキュリティマネジメントが、公式情報に沿った基本的な選び方です。合格率や出題内容の違いも踏まえたうえで、自分の職種や今後の方向性に合った試験を選んでください。
出典・参考データ
- IPA「統計情報(情報セキュリティマネジメント試験)」(統計資料 令和8年7月分・推移表:令和5年度72.6%、令和6年度69.0%、令和7年度70.0%、令和8年度4〜7月72.7%。令和7年度は応募50,226人・受験45,924人・合格32,141人)
- IPA「統計情報(基本情報技術者試験)」(統計資料 令和8年7月分・推移表:令和5年度47.1%、令和6年度40.8%、令和7年度38.3%、令和8年度4〜7月38.5%。令和7年度は応募172,217人・受験147,186人・合格56,370人)
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験」試験区分ページ(対象者像、CBT方式・通年実施、試験時間120分・60問)
- IPA「基本情報技術者試験」試験区分ページ(対象者像、科目A・科目Bの構成)
※本記事の数値は2026年9月時点でIPAが公表している資料に基づきます。合格率は年度・回により変動し、統計資料は毎月更新されます。最新情報はIPA公式サイトでご確認ください。本記事は特定の試験の合格や、資格取得による処遇の変化を保証するものではありません。
金融ITの現場で働くエンジニア。基本情報技術者・簿記2級・証券外務員一種ほか、数字と制度を「ズバッと分かる」形に翻訳するのが仕事。→ さるちゃんって何者?(プロフィール)
